生前贈与に対する対応方法について

相続人の中に、生前、亡くなった被相続人から財産を受け取っていた人がいる場合、特別受益として生前にもらった財産を考慮して遺産分割がなされることがあります。

この際、被相続人の遺産が十分に残っている場合には、他の相続人が生前贈与として受け取った額を考慮して遺産分割がなされることとなります。

(例えば、相続人が子供2名・遺産が1000万円・一方の子供が生前贈与として500万円を受け取っていた場合、生前贈与をもらっていない相続人は750万円を遺産分割において受け取ることができます)

一方で、遺産が全く残っていないような場合には、遺産分割において生前贈与の返還を求めることは原則としてできません。これは、遺産分割が、「現存する遺産を分ける手続である」ためです。

そのような場合、遺留分減殺請求を行うことで、法定相続分よりは少なくなるものの、一定額の返還を求めることができます。


生前贈与によって遺産の多くがなくなってしまった場合の対処方法

例えば、相続人が子供2人・遺産の残額が0円・一方の子供が生前贈与として1000万円を受け取っていた場合、

①遺産分割手続では原則として請求することができないのに対し、

②遺留分減殺請求では、250万円を請求することができます。

(1000×1/4(法定相続分の1/2)=250万円)

このように、多額の生前贈与がなされている場合には、遺留分減殺請求を行うかどうかを考える必要があります。

また、上記のように遺産が全く残っていない場合のみならず、特別受益額に比べて遺産の残額が極めて少ない場合にも、遺留分減殺請求を行った方が利益になることがあります。

もっとも、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します。

また、相続開始から10年が経過した場合も消滅します(民法1042条)。

そのため、相続が開始した場合には、早期に財産状況を調査し、どのような手続きを行うのが最善となるのか、ということを検討する必要があります。